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遺言書に書くべき事柄
遺言とは、亡くなった人が相続人の遺産分割を円滑に進めることができるように、遺産に関する指示を残した最後の意思表示です。
遺言には、遺言書に書くことで法的な意味を持つ事柄(「遺言事項」といいます)と、法的な意味を持たない事柄(「付言事項」といいます)があります。
それでは以下では具体的に見ていきましょう。
遺言に書くことで法的に意味を持つ内容
以下では遺言事項(遺言書に書くことで法的な意味を持つ事柄)について説明します。
相続分の指定
相続分とは、相続人間における相続財産(遺産)の分配の割合のことです。
遺言などがない場合の相続人の相続分は、法定相続分の割合になりますが、被相続人は遺言で自由に相続分を指定することができます。
遺産分割方法の指定と分割の禁止
遺言者は具体的な遺産分割の方法を決めることや、その遺産分割方法を第三者に委託することもできます。相続開始の時から5年を超えない期間で、遺産の分割を禁止することもできます。
相続財産の処分
遺言者は、法定相続人とならない孫などの親族や第三者、団体などに対し、相続財産を遺贈することができます。
非嫡出子の認知
結婚していない男女間に生まれた子供を「非嫡出子」といいます。
結婚していない女性との間にできた子供がいる場合、遺言で認知することができます。認知をすることによって、死後においても、遺言者は内縁の妻の子供を正式な自分の子として相続人に加えることができます。
相続人の廃除及びその取消し
相続人に虐待などの法定の廃除事由がある場合、遺言者は遺言によって、その相続人を相続人から除く「廃除」の申立てを行うことができます。遺言によって廃除を行う場合は、なぜ廃除したいのかの理由もしっかりと書いておくべきです。
注意ポイント
ただし、廃除が認められても、排除された元相続人に子がいる場合には、その子が代襲相続します。
条文
第892条
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
未成年後見人などの指定
未成年の子供がいる場合で、遺言者が死亡することによって親権者がいなくなる場合などでは、遺言によって第三者を未成年者の後見人や後見監督人を指定することができます。
遺留分減殺方法の指定
相続人には遺言でもなくすことができない最低限の相続分(遺留分)が認められています。
遺留分を侵害する生前贈与や遺言がある場合、遺言者は、遺言によって、どのように侵害された遺留分を減殺するかを指定することができます。
遺言執行者の指定又は委託
遺言に従った財産の取得を行わせる場合、不動産の登記の変更や預貯金の解約・分配などの手続が必要となることがあります。
遺言者は、遺言によってこのような手続を実際に行う者を遺言執行者として指定することができます。
遺言書に書くことに法的な意味を持たない事柄
遺言書に書くことに法的な意味を持たない事柄(「付言事項」といいます)には、たしかに法的な意味はありませんが、全く書く必要のないものではありません。
付言事項で遺言者の思いを明らかにすることで、相続人たちは遺言者の気持ちを知ることができます。遺言者の気持ちを知ることで遺産に関する争いが起こらなかったり、と良い面も間違いなくあります。ただ、遺言者の気持ちを伝えることができる最後のメッセージになりますので、相続人が、これからを前向きに生きていけるような気持ちにさせるような内容を書くことをおすすめします。
遺言書の書き方
遺言書の書き方については、「遺言書の書き方」の記事をご覧ください。