この記事では成年後見制度が本当に必要なのか、具体的に検証しています。
大阪八尾南駅の近くの植田司法書士事務所です。
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成年後見制度について、たとえば、一人暮らしの老人が悪質な訪問販売員に騙されて高額な商品を買わされてしまった場合に成年後見制度を利用していれば被害を防ぐことができる場合があります。という説明がなされることがあります。それはどのようにして被害を防ぐことができるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
成年後見制度を利用していなかった場合
もし、成年後見制度を利用することができる老人が、利用していない場合で悪質な販売業者に騙されて高額な商品を買わされてしまった場合、その老人は意思能力が無い状態であると一般的に言えます。意思能力が無い場合、その売買は無効になります。(大判明38.5.11)
(なお、現在判例・通説により、無効とされていますが、民法改正により明文化される予定です。)
第3条の2
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
成年後見制度を利用していた場合
高額な商品を買わされてしまった老人が成年被後見人であった場合、その行為は取り消すことができます。取り消すと、その売買は無効になります。
そうしますと、成年後見制度を利用していた場合と利用していなかった場合で、結論は同じく無効で違いがありません。
違いが無いのに成年後見制度を利用する必要はあるのでしょうか?
何の為に成年後見制度は存在するのでしょうか?
裁判の観点から
では、これを裁判の観点から見てみたいと思います。
裁判では、主張と立証が行われますが、成年後見制度を利用していたほうが立証が容易なのです。
成年被後見人であったことは後見登記の登記事項証明書で立証することができます。登記事項証明書は簡単に取得することができます。(ただし、取得できる者は限定されています。)
それに対して、意思能力が無かったこと、というのは後見制度に比べて立証は容易ではありません。
この点は、明らかに成年後見制度を利用する理由があります。
ただ裁判に勝訴した場合でも、悪質な販売業者が逃亡していたり、財産を隠蔽していたりした場合では、売買代金の回収は容易ではありません。
成年後見制度を利用する本当の価値は?
それでは、成年後見制度を利用する本当の価値はどこにあるのでしょうか。
成年後見制度を利用すると、成年後見人は成年被後見人の財産を管理する法的な立場にあります。ですから、成年被後見人の通帳や現金を現実的に管理する立場にあります。認知症などで判断能力を失った老人が通帳や現金を管理するより、判断能力が十分にある成年後見人が管理していた方が間違いなく安全です。
それでは、成年後見人ではない人間が管理していた場合を考えてみます。
親が高齢で子供が親の財産を管理していた場合を考えます。
そもそも子供が親の財産を管理する権限があるのか。
単に子供であるという理由で、親の財産を管理する権限はありません。
子供が二人以上いた場合には、管理していない子供から、不適切な管理や横領などを疑われる可能性もありえますし、実際に親のお金を自分の為に使い込む可能性もありえます。
財産管理契約などの契約を締結していた場合は財産管理をする権限があります。判断能力を失う前に契約をしていれば問題はありませんが、判断能力を失ってから契約を締結しても、それは無効です。
判断能力を失ってしまった場合に継続して財産管理をする法的な権限を得るには成年後見制度を利用するしかありません。
成年後見制度を利用することによって、判断能力を持った者が、法的にも正しい財産管理権限を持ち、現実的にも、しっかりと通帳や現金などの管理をすることによって、成年被後見人の財産が被害を受けることを防いでいるといえます。
また、判断能力を失っている者と取引するということは、取引がいつ無効になり、購入した物を返せと言われるか分からない状態で取引をするということです。このような取引は不安で仕方がありません。
しかし成年後見制度を利用して、成年後見人が成年被後見人に代わって、取引をするということは有効な取引であるので、上記のような不安は生じないのです。
このような意味でも成年後見制度を利用する価値はあると言えるでしょう。
成年後見センター・リーガルサポートとは
公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポートとは、1999年に、高齢者、障がい者等が自らの意思に基づき安心して日常生活を送ることができるように支援し、もって高齢者、障がい者等の権利の擁護及び福祉の増進に寄与することを目的として全国の司法書士によって設立された団体です。
参考:公益社団法人 成年後見センター・リーガル サポートのホームページ
参考:「成年後見人・任意後見人とは」の記事もご覧ください。